尿検査で異常を指摘された

おしっこは体の老廃物の集まりですが、これを調べることで体の異常がわかることがあります。
健康診断や人間ドックで尿鮮血陽性、尿蛋白陽性を指摘されたり、腎臓から尿へ排泄されるクレアチニンが高値と指摘された場合について解説します。

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尿潜血陽性

尿中の赤血球

尿に血液が混じったものを血尿といいますが、尿が赤く見た目で血尿と分かるものを「肉眼的血尿」と呼び、肉眼では分からず顕微鏡を用いた検査によって血尿と判断されるものを「顕微鏡的血尿または尿潜血」と呼びます。
つまり、尿鮮血は、目で見てわかる血尿の前段階の可能性がある、ということです。
ですので尿に潜血が混じるのは、膀胱癌など危険な病気の初期症状のこともあるので、注意が必要です。

ただ、検診で行われる試験紙法を用いた尿検査は、感度が良すぎるので異常がない人も陽性にでてしまい、検査に引っかかる人が多すぎるのが問題です。検診を受けた人の2〜30%が陽性になると言われています。
全員が病気かというとそうではなく、病的意義のないものがほとんどです。

尿鮮血が陽性で必ず受診したほうがいいのはどんな人?

いままで陽性でなかった方が新たに潜血を指摘された場合や、尿潜血1+だったのが2+や3+になった場合、喫煙歴があるかたはしっかり泌尿器科に受診したほうがいいでしょう。
また検診で毎回尿鮮血が陽性になるかたも、何年かに一度は泌尿器科に受診しておいたほうが安心ではあります。

尿潜血陽性の場合に行う検査

泌尿器科に受診したら、まず尿を顕微鏡で細かくみる尿沈渣検査を行います。
尿沈渣は、尿を遠心分離機で分離し沈殿物を顕微鏡でみる検査です。
400倍の視野で赤血球が5個以上ある場合血尿の診断となります。
また尿沈渣で赤血球の形態をみることも重要です。血尿ででている赤血球の形態をみることで、出血している部位が糸球体性か非糸球体性かをみることができます。赤血球の形が変形している場合(変形赤血球)は糸球体血尿であり腎臓内科的疾患が疑われます。一方、赤血球の形態が正常な場合は非糸球体性の血尿が疑われ、泌尿器科的疾患の可能性が高まります。
また赤血球と同時に尿中に白血球や円柱が出ていないかも見ます。

尿潜血陽性の原因となる疾患

尿を作る腎臓、尿を一時的に溜める膀胱、それらをつなぐ尿管や尿道に何らかの病的状態が生じると、血尿が生じます。
血尿の原因となる病気には、膀胱炎、尿路結石、ガン(膀胱癌・尿管癌・腎盂癌・腎癌、前立腺癌)などがあります。また糸球体腎炎などの内科的疾患でも陽性になります。

尿タンパク陽性

尿蛋白は、腎臓で老廃物を濾過する役割を担っている糸球体が障害されることで生じます。
生理的蛋白尿や起立性蛋白尿といった病的意義のない蛋白尿もありますが、IgA腎症(慢性糸球体腎炎)ネフローゼ症候群といった病気を早期に発見するのが重要になります。
検診で行う尿たんぱく検査は、尿の濃度で変化するので±や1+の結果のかたでも、病院に受診し実際どのくらい尿たんぱくが出ているかの定量検査を行う必要があります。
また腎臓エコーを行い、腎臓が萎縮してないか血管が狭窄してないかのチェックや採血で腎機能が低下していないかを見ます。

腎機能低下Cr上昇

クレアチニン(Cr)は筋肉で1日一定量産生され、それと同じ量が腎臓で排泄されます。クレアチニンが上昇するのは、なにかしらの原因で腎臓の排泄能力が低下していることを示します。
腎機能低下を見たら、まずは慢性(ゆっくり)、なのか急性(いきなり)なのかを見ます。
慢性の経過で腎機能が徐々に悪化していく疾患が慢性腎臓病:CKD (Chronic kidney disease) ですが、原因疾患で多いのは、糖尿病や加齢や動脈硬化が原因となる腎硬化症です。
一方、急性の経過で腎機能が悪化する場合、その原因が、腎臓自体に問題があるのか、腎臓の前にあるのか、腎臓のあとにあるのかの鑑別が重要になります。

腎前性腎不全

脱水や心不全などが原因で腎臓に流れる血流量が低下することで、腎機能が悪化します。

腎性腎不全

感染や炎症、自己免疫疾患などで腎臓自体が障害され腎機能が悪化します。
急性糸球体腎炎、急性尿細管壊死などです。

腎後性腎不全

腎臓で尿が作られた後、尿の通り道の通過性が悪くても腎機能は悪くなります。
尿管結石前立腺肥大症など泌尿器科疾患が原因となることが多いです。

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