前立腺癌の遺伝子検査
2024年4月に前立腺癌の新しい治療薬として、タラゾパリブトシル(商品名:ターゼナカプセル、以下ターゼナ)が発売されました。
ターゼナは、遺伝子変異のある前立腺癌の治療薬です。今後日本でも前立腺癌に対し遺伝子治療、検査が広く行われることが予想されます。
前立腺癌の遺伝子治療、検査についてやや専門的な内容ですが、泌尿器科専門医がわかりやすく解説しました。
前立腺癌とは
前立腺癌は、前立腺の細胞が異常に増殖し、腫瘍を形成する状態です。早期には症状が少ないことが多いですが、進行すると排尿障害や腰痛、骨への転移などが見られることがあります。
遺伝子変異と前立腺癌の関係
前立腺癌は遺伝的要因が強く、家族歴がある場合は特にリスクが高くなります。
遺伝子は、私たちの体を作り、機能させるための設計図のようなもので、DNAという物質に情報が書かれています。
遺伝子変異は、このDNAの塩基配列が変わることで、自然発生的なエラー、放射線や化学物質、ウイルス感染などの外部環境によって、DNAが損傷し、変異が起きることがあり、細胞の正常な機能が損なわれることがあります。
前立腺癌の発生と関わる遺伝子変異がいくつか分かっています。
- BRCA1/BRCA2:
- 乳癌や卵巣癌のリスクを高めることで知られているこれらの遺伝子変異は、前立腺癌のリスクも増加させます。BRCA2の変異は特に前立腺癌のリスクを大きく高めます。
- HOXB13:
- HOXB13遺伝子のG84E変異は、前立腺癌のリスクを増加させることが知られています。この変異は特に家族性前立腺癌で見られることがあります。
- ATM:
- ATM遺伝子の変異も前立腺癌のリスクを増加させます。この遺伝子はDNA修復に関与しており、その機能が失われることで癌の発生リスクが高まります。
- CHEK2:
- CHEK2遺伝子の変異も前立腺癌のリスクに関連しています。この遺伝子もまたDNA修復に関与しています。
特にBRCA遺伝子変異が最も重要です。
遺伝子検査とは
遺伝子検査は、DNAを調べて特定の遺伝的な特徴を確認する検査です。日本で前立腺癌で保険適応とされているのは、遠隔転移のある、内分泌療法が効かなかったかた(去勢抵抗性)になります。
前立腺癌の診断を受けていないが、家族に前立腺がんになったから心配で検査してほしい、といったかたは保険適応になりません。
どのように行われるのか
BRCA検査やFoundation One検査といった検査があります。血液検査や生検検体を用いて検査します。
BRCA検査はBRCA遺伝子変異のみをターゲットにします。
Foundation One検査はゲノム医療中核拠点病院、連携病院での検査が指定されています。
前立腺癌に対するPARP阻害薬
現在、BRCA遺伝子変異前立腺癌に対する治療薬としてPARP(パープ)阻害剤と呼ばれるオラパリブ(リムパーザ)、タラゾパリブ(ターゼナ)が適応となっています。
BRCA遺伝子陽性で遠隔転移を有する、去勢抵抵抗性前立腺癌(内分泌治療を行なったが無効となった前立腺癌)が適応です。
副作用としては、骨髄抑制(貧血、好中球減少、血小板減少、白血球減少、リンパ球減少)、間質性肺疾患、血栓塞栓症などがあります。また、その他の副作用として食欲減退、悪心、脱毛症、疲労・無力症が報告されています。
まとめ
前立腺がんの遺伝子検査で今後前立腺がんの治療選択肢が大きく変わっていくことが予想されます。
気になる方は医師と相談してみましょう。
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