血尿がでたら

トイレでおしっこをしたときに血尿が出たら、びっくりしますよね。

でも、血尿って何科を受診したらいいの?内科かな?

と迷われるかと思います。
救急車を呼んだほうが良いのか?夜中でも救急外来に受診したらいいのか?迷ってしまうかもしれません。
症状が血尿だけの場合は、救急車を呼ぶ必要はありませんし、救急外来を受診する必要もありません。(救急外来に行っても長時間待たされて、簡単な尿検査をされて原因がわからず終わるだけです)
落ち着いて、日中に泌尿器科で受診ができる施設を探して早めに受診しましょう。
熱がある、ひどくお腹がいたいなど随伴する症状があり、待てそうでなければその限りではありません。
トイレででた血尿が残っているならば、それをスマホやデジカメに残しておいて、病院に受診する時に見せていただけたら、診断の参考になる可能性があります。

目次

血尿について


血尿の分類

血液が尿に混じったものを血尿といいますが、尿が赤く見た目で血尿と分かるものを「肉眼的血尿」と呼び、肉眼では分からず顕微鏡を用いた検査によって血尿と判断されるものを「顕微鏡的血尿または尿潜血」と呼びます。
顕微鏡的血尿についてはこちらのページへどうぞ。↓

ここでは「肉眼的血尿」についてお話しします。

この写真の上段は正常の尿の色です。尿の濃さで色が違いますがどれも正常です。
一方、写真下段は血尿になります。尿に混じる出血の具合で、血尿にも段階があります。
少しの血尿ならば左側のように、うすピンクですが、血尿が濃くなっていくと真っ赤になり、さらにひどくなると赤黒い塊のような血尿になります。

それって本当に血尿??

血尿を主訴に来院されるかたでも、実は血尿でないことがあります。
特に女性の場合、トイレのときに便器に血がついていて血尿だと思って受診したら、血尿ではなくて、膣や肛門から出血していた、ということはよくあります。
逆もまた然りで、婦人科系の出血と思って婦人科を受診したら血尿だった、ということもあります。

また尿の色がいつもと違うと来院されましたが、正体は血尿ではなく、ビリルビン尿だったこともあります。ビリルビン尿は濃い茶色のような尿の色で、肝臓や膵臓の病気でビリルビンが体内に蓄積したら生じる尿です。

血尿の原因疾患

血尿の原因

尿を作る腎臓、尿を一時的に溜める膀胱、それらをつなぐ尿管や尿道に何らかの病的状態が生じると、血尿が生じます。
血尿の原因となる病気には、膀胱炎尿路結石ガン(膀胱癌・尿管癌・腎盂癌・腎癌、前立腺癌)などがあります。
また女性の外尿道口に小さい血豆のようなできものができる尿道カルンクルスという病気があり、下着に血液が付いていたという症状でこられることがあります。
やはりガンが一番心配ですので、血尿が一度でもでたらそのままにせず、泌尿器科受診が必要です。
泌尿器科ガンのリスクファクターには喫煙歴男性40歳以上・女性50歳以上があり、これらを満たす場合、より厳重に精密検査を受けていただく必要があります。

ストレスで血尿になりますか?

とよくご質問を受けますが、精神的ストレスが原因で血尿になる、というのは基本的にないです。
女性の場合、ストレスから膀胱炎になって排尿痛などの症状があまり目だたず、血尿の症状だけでる可能性はあります。それでも、尿検査で尿路感染を起こしているかの確認をしたほうがいいでしょう。
男性の場合、膀胱炎は前立腺肥大などの背景がないと起きることはないので、血尿がでたら絶対精査が必要です。
血尿=ストレス」というイメージは、戦時中に軍隊で長距離の行軍で血尿が出た、という映画や小説のエピソードから来ていると思われます。これは極度の運動で赤血球が破壊されることで、ヘモグロビンが尿にでてくるヘモグロビン尿が原因とされ、厳密には血尿とは少し違います。
血尿がでたけど最近疲れていたせいだろうな、と自己判断するのは危険ですので絶対おやめください。
一方、過度の肉体的ストレスは、血尿を引き起こすことがあります。運動をすると、全身から腎臓に流れ込む血流量が少なくなるよう調整されます。それがあまりに過度で長時間続くと糸球体という尿のろ過装置にダメージが起こり、血尿が起こるとされています。またコンタクトスポーツで尿路に物理的外傷がおき血尿が起こることもあります。
ただ、運動後の血尿も、運動のせいと片付けず、他に隠れた疾患がないか精査が必要となります。

血尿の原因を調べる検査

まず尿検査を行いますが、正しい検査方法で尿を採取することが重要です。
中間尿といい尿道や陰部の雑菌の混入を防ぐため、排尿の最初と最後の部分をさけた排尿途中の尿を採取します。
女性の場合、生理の時期は尿検査を避けて下さい。
そして、尿の色調の観察、尿中の赤血球数や白血球の算定、尿細胞診検査を行い腫瘍細胞の有無を確認します。
超音波検査、血液検査、膀胱鏡検査、CT検査を必要に応じて行います。

泌尿器科医でないと知らない膀胱タンポナーデという言葉があります。
ひどい血尿で、膀胱のなかが出血した血の塊で充満した状態のことをいいます。
こうなってしまうと、血の塊が邪魔しておしっこが出せなくなってしまうのでおなかがパンパンに張って苦しくなるので、緊急で血腫を除去する処置が必要になります。
ここまで血尿がひどくなる前に病院に受診しなければいけません。

以上血尿について解説しました。
血尿が一度でもでたら泌尿器科に受診しましょう。

文責 中西雄亮

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